幻想民族問題小説

 

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 

私は映画ではSFと言うジャンルのものをみることはあったのに、小説でSFは今まで読んでこなかった。さらには、海外の作家の作品に目を通すことも滅多になかった。名作と呼ばれるもので「老人と海」と「車輪の下」とかそういのだけだった。だから同時代に生きる海外作家の本を読むなんてことはなかった。

 ただ、この一冊を読んだ時に今までの読書ライフをだいぶ損をして生きてきたのだなということを痛感した。

 もちろん私が読んだのは日本語に翻訳されたものである。言語を完全に翻訳しきることは不可能だと私は思っているから、これが全てケン・リュウが書いたものそのままであるとは思わない。しかし、この翻訳者が大変優れているのだろうか。きっとこれがケン・リュウが書いたものだというように感じられたし、しかも英語ではなく、初めから日本語で書いたのではないかという感覚に陥った。

 幻想的な物語の中に民族の問題が息づいている。これは作者がおそらく小さい頃かから抱えていたものだからであろう。決して押し付けがましく「私が書きたいのは民族問題だ!!!」という印象は全く受けない。生活の中に民族問題が溶け込んでいる印象なのだ。私は日本で生まれ、日本人として育ってきた。他の民族ということを特に意識して生きてきたことはない。(もちろん、日本だってアイヌ琉球の民族を侵略し、在日中国人や在日韓国人を抱えているのだが)だから世界で起こっている移民問題をどこか遠くに感じてしまう。(日本は全然移民を受け入れない国であるからでもあるのだが)少しでもこの小説から受けた移民の問題の生活に溶け込んだ感覚を大切に心の隅に置いておきたいと思った。

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